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前立腺癌に対するMRI診断と生検

No.4702 (2014年06月07日発行) P.64

鴨井和実 (京都府立医科大学大学院医学研究科泌尿器外科学講師)

登録日: 2014-06-07

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

「前立腺癌診療ガイドライン2012年版」ではMRI診断前に系統的生検が推奨されていますが,近年のMRI診断の進歩から考えていかがでしょうか。文献にもありますが,得られる情報量,医療経済面からも生検前のMRI検査が推奨されると考えています。また,他領域では生検による播種を懸念する方向性がありますが,穿刺精度を上げ穿刺本数を減らすためにも(MRIのさらなる診断能上昇を前提に),系統的生検からターゲット化生検に今後移行する可能性はいかがですか。京都府立医科大学・鴨井和実先生のご回答を。
【質問者】
片平和博:国家公務員共済組合連合会熊本中央病院 放射線診断科部長

【A】

「前立腺癌診療ガイドライン2012年版」作成時点でのエビデンスレベルとしては,生検前MRI診断の有用性は十分証明されていませんでした。しかし,ここ数年で生検前MRI診断の有用性に関する報告は急速に増加しており,泌尿器科領域での前立腺生検に対する考え方も変わってきました。
まず,生検前MRI診断は生検適応症例の選択に有用です。MRI異常所見を有する症例からは,かなり高率に生検で癌が検出されることがわかってきました。また,MRIで異常所見のない症例に生検を行っても,臨床的に意義のある前立腺癌が発見される可能性は低く,このことは生検前MRI所見と前立腺全摘標本を比較した検討からも証明されつつあります。MRIで異常所見を示す部位を標的とした生検は,系統的生検よりも高率に癌が検出されるため,正確な標的生検は癌の診断に必要な生検本数を減らす可能性があります。
ただし,標的生検だけで診断した場合,今まで通りの前立腺全体の治療を行う場合には大きな問題はありませんが,現在注目されている局所療法を考慮する際には,治療範囲の決定において十分な情報が得られないことが問題となります。
今後,生検前MRI診断は必要な生検回数と生検本数を減らすことによって,医療経済的な有用性も証明されると思われます。新しい治療技術の開発とも関係して,生検前MRI診断の有用性はますます認識されるようになるでしょう。

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