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わが国における腸チフスの治療

No.4706 (2014年07月05日発行) P.57

大西健児 (東京都立墨東病院感染症科部長)

登録日: 2014-07-05

最終更新日: 2016-10-26

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腸チフスに対しては,1980年代後半頃まではクロラムフェニコール(CP)が著効を示し,第一選択薬であった。当院では,成人の場合,1日量2.0g(分4)で解熱後3日くらいまで経口投与し,その後は1日量1.0g(分4)を少なくとも10日間経口投与する方式であった。
その後,CPを含めいくつかの抗菌薬に耐性を示すチフス菌の出現により,長く使われていたCPに代わりフルオロキノロン系抗菌薬(FQ)が経口で使用されるようになった。FQの有効性が期待できた期間は比較的短く,低感性あるいは耐性菌の出現により,セフトリアキソン(CTRX)が使用されるようになった。また,チフス菌は細胞内寄生菌であることから,細胞内の濃度が高くなるアジスロマイシン(AZM)の有効性も報告されるようになった(文献1)。
わが国では,現在のところFQあるいはCTRXで治療を開始し,FQに感性を示すチフス菌であればFQで,FQに低感性あるいは耐性を示す菌であればCTRXで治療を続ける症例が多いようである。しかし,FQに対し低感性を示すチフス菌が増加していること,CTRXは点滴投与であること,臨床的にCTRXの効果が十分ではない場合もあることから,最近は最初からあるいは途中変更でAZMが経口で使用されるようになりつつある。AZMの効果が期待できなくなった場合はどうなるのであろうか。案外,CPの効果が期待できるようになっているかもしれない。

【文献】


1) Ohnishi K, et al:Southeast Asian J Trop Med Public Health. 2013;44(1):109-13.

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