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HB母子感染予防法の変更の経緯

No.4710 (2014年08月02日発行) P.58

久保隆彦 (国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター産科医長)

登録日: 2014-08-02

最終更新日: 2016-10-26

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危惧していたHB母子感染予防の脱落例は現実のものとなった。森島班による全国調査で,HBキャリアとなった児の約3割は母子感染予防が完遂されていなかったことが判明した。複雑で,しかもわが国の乳児健診スケジュールと馴染まない従来の予防法を,海外と同様のエビデンスのある方法に変更することが強く望まれた。
新方式はワクチンを出生直後(12時間以内),1カ月後,6カ月後に接種するものである。日本の大多数の分娩施設では児の1カ月健診も行っているため,このスケジュールであれば最初の2回の脱落は少なくとも防止可能となる。
2011年に未承認薬のスキームで新方式への変更を要望したが,簡単な行程ではなかった。これは,産科系学会がこの新方式への変更を要望したのに対し,小児科系学会はuniversal vaccinationをめざして異なるワクチン接種法を要望していたためである。そこで,関係諸学会へのネゴシエーションに1年半をかけ,新方式への変更に統一した。
2013年10月18日に薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会で公知申請への該当性が了承され,保険適用となった(文献1)。この時点では旧方式と新方式の両者が保険適用であったが,2014年3月17日にグロブリン,ワクチンの添付文書が改訂され,新方式のみが保険適用となった。しかし,旧方式を開始している場合には新方式への変更は不可能なため,14年9月末日までは経過措置として旧方式を認めるよう厚生労働省の担当課に交渉し了解を取り,通達を出して頂いた。

【文献】


1) [http://www.jspnm.com/topics/data/topics 20101101.pdf]

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