IgA腎症は慢性糸球体腎炎の原因として頻度の高い疾患であり,わが国の慢性糸球体腎炎患者においては,成人の30%以上,小児でも20%以上を占める(文献1)。以前は予後良好な疾患と考えられていたが,1990年代に報告された20年間の腎予後では,約40%が末期腎不全に陥っており,治療の重要性が認識されるようになった(文献1)。
2001年に堀田らが,扁桃腺摘出とステロイドパルス療法を併用する治療(扁摘パルス療法)がIgA腎症の寛解に有用であることを報告してから,わが国では本治療を行う施設が増え,最近では1000~1500例/年程度,本療法が施行されているものと想定されている(文献2)。
活動性IgA腎症に対するステロイドパルス療法の有用性は,海外のランダム化比較試験(RCT)で示されているが,扁摘パルス療法に関しては観察研究による報告に基づくものであり,RCTによる検討が待たれていた。最近,国内で施行された扁摘パルス療法とステロイドパルス療法単独のRCTの結果が報告された(文献3)。治療開始後1年間の蛋白尿減少は扁摘パルス療法群で有意に大きいもののその差はわずかであり,また蛋白尿,血尿の消失率では有意差がみられなかった。
しかし,IgA腎症における真のエンドポイントである腎予後に対する扁摘パルス療法の意義についてはまだ十分な結論が出たとは言えない。上記のRCTの追跡調査や,各1000例程度からなる「後ろ向き」と「前向き」の多施設コホート研究が現在施行されており,これらの結果が待たれる。
1) 松尾清一, 他:日腎会誌. 2011;53(2):123-35.
2) 川村哲也:腎と透析. 2014;76(1):37-41.
3) Kawamura T, et al:Nephrol Dial Transplant. 2014;29(8):1546-53.