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胃癌に対する術前化学療法

No.4719 (2014年10月04日発行) P.54

市川大輔 (京都府立医科大学消化器 外科講師)

大辻英吾 (京都府立医科大学消化器 外科教授)

登録日: 2014-10-04

最終更新日: 2016-10-26

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従来より,高度進行胃癌に対して拡大手術が行われてきたが,ランダム化比較試験において有意性を示すことができず,化学療法を含めた集学的治療の重要性が再認識されている。化学療法に関しては,S-1を用いた術後補助化学療法の大規模ランダム化比較試験の結果が報告され,StageⅡ・Ⅲ胃癌(『胃癌取扱い規約 第13版』)に対する術後1年間のS-1の服用が推奨されている。
しかしながら,同試験のサブグループ解析において,StageⅢ胃癌に対する術後補助化学療法の効果は十分と言えず,近年,さらなる予後向上をめざした試みが行われている。術後補助化学療法としてS-1+α(シスプラチン,タキサンなど)も試みられているが,治療コンプライアンスの低さが問題となり,治療レジメンの完遂に様々な工夫が必要である。
一方で,高い治療コンプライアンスのみならず,微小転移に対する早期の治療開始や,治療によるdown staging,また,切除標本による組織学的治療効果の判定が可能などの利点から,手術を前提とした術前化学療法が臨床試験として行われている。主に,(1)高度リンパ節転移併存胃癌,(2)4型もしくは大型3型胃癌,(3)StageⅢ胃癌などを対象に臨床試験として行われているが,(1)に関しては既に良好な結果が報告されており(文献1),(2)に関しても比較的良好な結果が報告され(文献2),ランダム化比較試験が現在進行中である。ただ,術前診断の正確さなどの問題点も指摘されており,今後のさらなる検討が期待されている。

【文献】


1) Tsuburaya A, et al:Br J Surg. 2014;101(6):653-60.
2) Iwasaki Y, et al:J Surg Oncol. 2013;107(7): 741-5.

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