リンパ脈管筋腫症(LAM)においては,LAMを合併する遺伝性疾患である結節性硬化症の原因遺伝子(TSC1とTSC2)が1990年代に同定され,孤発性LAMにおいてもTSC2遺伝子の体細胞突然変異が認められた。LAM細胞では,TSC1,TSC2遺伝子がコードする蛋白の機能異常により,シグナル下流にあるmTORが恒常的に活性化されることが示され,LAMは今日,腫瘍性疾患に位置づけられる。mTOR阻害薬sirolimus(ramamycin)を用いた臨床試験(MILES試験)により呼吸機能低下抑制効果が示され(文献1),分子標的治療の対象疾患となった。しかし,長期予後への影響など未解決な点も多い。
肺胞蛋白症(PAP)のうち,後天性のものはさらに原発性(特発性)PAPと二次性(続発性)PAPに分類される。原発性PAPの発症機序には,抗GM-CSF中和抗体(自己抗体)が関与していることが明らかとなっており,自己免疫性PAPとも言われている。GM-CSFのシグナル異常のため,肺胞マクロファージにおけるサーファクタント代謝障害が生じることが本疾患の主たる病態と考えられる。これらの知見に基づいて,診断上の血清抗GM-CSF抗体価測定の有用性(文献2)や,GM-CSF吸入療法による治療の有効性が示されている(文献3)。
1) McCormack FX, et al:N Engl J Med. 2011;364 (17):1595-606.
2) Bonfield TL, et al:Am J Respir Cell Mol Biol. 2002;27(4):481-6.
3) Tazawa R, et al:Am J Respir Crit Care Med. 2010;181(12):1345-54.