肺癌による死亡数は国内で年間約7万人を超えており,がん死の中で最も多い。他のがんに比べ肺癌の死亡率は高いが,それは肺癌の多くが進行癌で発見されることが原因の1つであると考えられる。肺癌は初期においては症状が乏しいため,早期での発見を増やすには検診が重要である。早期肺癌の検出率向上のために,従来の胸部X線検査に代わって,低線量化した胸部CT検査の開発と検診での有用性の検討が進んでいる。
日本では対策型および任意型検診として,非高危険群には胸部X線が,高危険群には胸部X線と喀痰細胞診による肺癌検診が,死亡率減少効果を示す相応の証拠があることから推奨されている(文献1)。胸部CTは胸部X線よりも早期肺癌の検出能が高いが,通常のCTでは被ばく量が多く,検診には適していない。低線量CTとは被ばく量を低減したCTで,画質は低下するものの最近は画像処理の進歩により画質が向上しており,任意型検診で行われる機会が増えてきた。低線量CTと胸部X線による肺癌検診を比較した大規模臨床試験によると,低線量CTでは胸部X線に比べ肺癌死亡率の減少を認め,低線量CTによる検診の有用性が報告された(文献2)。
低線量CTによる肺癌検診は,高い偽陽性率や被ばく,費用といった問題点が残ってはいるが,肺癌死亡率の減少に向けて,今後のさらなる発展が期待される。
1) Sobue T, et al:Int J Cancer. 1992;50(2):230-7.
2) Aberle DR, et al:N Engl J Med. 2011;365(5): 395-409.