2012年,大阪のオフセット校正印刷工場の現・元従業員のうち,複数名が胆管癌を発症したことが発端となった。調査の上,健康診断を行ったところ,17名が発症し,うち8名が死亡していた。17名は全員男性で,25~45歳と若い。大阪の校正部門に在籍したことがある者を対象としたコホートで,観察期間を1985年初~2012年末とすると,標準化罹患比は1132.5と著しく高い。
胆管癌は高齢者に多発するが,今回の事例では若年発症が特徴で,新しいタイプのものである。発症時の多くはγ-GTP高値の肝機能異常,CA
19-9などの腫瘍マーカーの上昇や,超音波検査での異常所見であった。画像診断上,腫瘤像,胆管狭窄像,主腫瘍による末梢側胆管拡張像に加えて,主腫瘍と関係のない限局性の肝内胆管拡張像がみられた。主腫瘍は,腫瘤形成型あるいは胆管内発育型の肝内胆管癌や乳頭型の肝外胆管癌で,その多くは総肝管から肝内胆管第3次分枝の比較的太い胆管に存在した。広範囲の胆管に慢性胆管障害像および胆管上皮層内腫瘍(BilIN)や,胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)などの前癌病変がみられた。
原因として,1,2-ジクロロプロパンand/orジクロロメタンの高濃度曝露が考えられ,当該事業場以外でも2014年末までに18名が業務上疾病と認定され,労災補償されている。
▼ Kubo S, et al:J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2014;
21(11):809-17.
▼ Sobue T, et al:J Occup Health. 2015 Feb 7. [Epub ahead of print].