HMPVは2001年にオランダでvan den Hoogenらが発見したパラミクソウイルス科のウイルスで,その遺伝子はRSウイルスと非常に似ている。また,上・下気道の線毛上皮が感染のターゲットである。主に,乳幼児における呼吸器感染症の原因ウイルスとして知られ,小児ウイルス性呼吸器感染症の5~10%を占める。流行時期は3~6月,感染経路は飛沫感染で,ウイルス排泄期間は7~14日間である。これまでPCR法診断やペア血清での抗体価上昇による診断法であったが,最近では迅速診断キット(チェックhMPV)で診断が可能である。
症状としては,インフルエンザと類似した急性の発熱,咳嗽,鼻汁を認める。約1週間で症状は自然軽快する。小児では感染すると呼吸器症状をきたす場合が一般的で,68~90%に咳,44~77%に鼻汁,52~86%に発熱,51~56%に喘鳴がある(文献1)。急性の呼吸器感染症で入院した成人で,RSウイルス感染症(31例),インフルエンザウイルス感染症(33例),HMPV感染症(23例)を比較した報告によれば,症状はHMPV感染症では発熱と筋痛はインフルエンザより少なく,また,高齢者や心血管疾患を有している患者にHMPV感染者が多い(文献2)。なお沖縄県では,成人に複数のアウトブレイクを経験している。
1) Schildgen V, et al:Clin Microbiol Rev. 2011;24 (4):734-54.
2) Widmer K, et al:J Infect Dis. 2012;206(1):56-62.