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胃癌腹膜播種に対する抗癌剤腹腔内投与とサルベージ手術

No.4749 (2015年05月02日発行) P.52

夏越祥次 (鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科教授)

登録日: 2015-05-02

最終更新日: 2016-10-26

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胃癌の治療成績は早期胃癌の発見頻度の上昇や抗癌剤の開発により向上がみられている。しかし,再発胃癌や切除不能胃癌の中で腹膜播種が占める割合は大きく,治療に難渋する場合が多い。以前より腹膜播種に対する治療として抗癌剤の腹腔内投与(IP)や温熱療法が行われてきた。最近,新規抗癌剤のひとつであるタキサン系抗癌剤(パクリタキセル:PTX)のIPとS-1の内服投与により,腹膜播種症例に効果が認められてきている。
審査腹腔鏡検査が行われ,腹膜播種と癌性腹水が確診された64例に対し,PTXのIPとS-1が投与された(文献1)。IP用のチューブは皮下ポートに接続され,PTXが頻回投与された。投与後に2回目の審査腹腔鏡検査を行い,腹膜播種結節の収縮と腹腔内洗浄細胞診の陰性が確認された34例に胃切除術が施行された。完全切除(R0)は22例に施行可能であり,grade 2と3の組織学的効果が7例と1例に認められた。手術死亡例はなく合併症は縫合不全と膵液漏が各1例であった。生存期間の中央値と1年生存率はそれぞれ26.4カ月,82%であった。1~5回,6~10回,10回以上投与された各群で予後の差はなく,R0とR1/R2手術の間にも差はみられなかった。一方,化学療法の効果が少なく,手術が施行できなかった30例の治療成績は,生存期間の中央値と1年生存率がそれぞれ12.1カ月,26%であった。
腹膜播種に対するこれまでの治療成績は十分ではなかったが,本研究の結果が新たな治療手段になることが期待される。

【文献】


1) Kitayama J, et al:Ann Surg Oncol. 2014;21(2): 539-46.

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