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未破裂脳動脈瘤の自然歴と治療適応

No.4753 (2015年05月30日発行) P.54

村田英俊 (横浜市立大学脳神経外科講師)

登録日: 2015-05-30

最終更新日: 2021-01-06

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未破裂脳動脈瘤の治療適応は,自然歴における破裂リスクと手術リスクによって決定される。
わが国では1997年に日本脳ドック学会からガイドラインが示され,大きさ5mm以上,全身合併症のない70歳以下の患者において,十分なインフォームドコンセント(IC)のもと治療を検討するとした。一方,欧米56施設で行われた国際未破裂脳動脈瘤研究(ISUIA)の前向きデータ(文献1)では,破裂リスクに比して手術合併症リスクは決して低いものではなかった。
また,わが国における小型動脈瘤の前向き研究(SUAVe study)(文献2)でも5mm未満の破裂率は低く,これらから『脳卒中治療ガイドライン2009』では 余命10~15年以上ある患者に対し,5~7mm以上の動脈瘤,あるいは後方循環,前交通動脈瘤(A-com),内頸動脈─後交通動脈分岐部瘤(IC-PC),dome-neck aspect比が大きいもの,不整形のもの,などで治療を考慮するとした。
そして,2012年にわが国より最大コホートの前向きデータ(UCAS Japan)が発表された(文献3)。年間破裂率は0.95%であり,大きいものほど破裂の危険性が高く,A-com,IC-PCは中大脳動脈瘤より破裂率が約2倍高かった。不整な突出のある動脈瘤は,ないものに比較して約1.6倍の破裂率であった。
この結果は,これまでのガイドラインを支持するものと言えるが,個々の患者背景をふまえ,十分なICのもと治療を行うことは言うまでもない。

【文献】


1) Wiebers DO, et al:Lancet. 2003;362(9378):103-10.
2) Sonobe M, et al:Stroke. 2010;41(9):1969-77.
3) UCAS Japan Investigators, et al:N Engl J Med. 2012;366(26):2474-82.

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