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肺炎球菌ワクチン接種の動向

No.4755 (2015年06月13日発行) P.51

井上慎一郎 (杏林大学高齢医学)

登録日: 2015-06-13

最終更新日: 2016-10-26

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わが国では,1988年に23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)が成人向けに承認され,任意接種となった。2008年,WHOは肺炎球菌ワクチン接種後の成人市中肺炎において,生存率の改善,呼吸不全の頻度の低下,入院期間の短縮を認め,重症化,死亡リスクを軽減すると報告(文献1)した。2011年,厚生科学審議会ワクチン評価に関する小委員会(文献2)は,65歳以上の日本人全員がPPSV23接種を受けた場合,年間約5115億円の医療費が削減されると推計した。そして,2014年10月1日より,PPSV23の65歳以上の成人(および60歳以上65歳未満のハイリスク症例)を対象とした定期接種が開始され,2018年度末まで,65歳以上の初回接種者に限り全員に助成を行うこととなった。2019年度以降は未定である。

また,現在小児に定期接種されている13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)は,2014年6月より65歳以上の成人に適応拡大され,任意接種可能となった。PCV13は,免疫原性の違いから,PPSV23より強い抗体産生が可能とされ,米国では65歳以上の成人に対し,PCV13初回接種後にPPSV23追加接種を推奨しているが,わが国では2015年1月30日,日本呼吸器学会および日本感染症学会が合同でコメントを発表し,現時点ではエビデンスが不十分としてPCV13は任意接種にとどめ,3年以内に見直しを検討するとしている(文献3)。

【文献】


1) WHO position paper:Wkly Epidemiol Rec. 2008;
83(42):373-84.
2) 厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会:ワクチン評価に関する小委員会報告書. 肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(成人用). 2011.
3) 日本呼吸器学会:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方. 2015.

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