頭蓋頸椎移行部(CVJ)は延髄・上位頸髄・椎骨動脈(VA)など解剖学的重要構造物を含み,かつ可動性の高い部位である。そのためCVJ手術では不安定性や脊柱変形をきたしやすく,除圧(摘出)術とともに固定術の成否が予後を大きく左右する。頭蓋頸椎固定術あるいは環軸椎固定術において,古くはGalli法(1939)やBrooks法(1978)といった椎弓下ワイヤーを用いた固定が行われていたが,制動効果は強いものではなかった。その後,環軸椎関節に対する経関節スクリュー(Magerl法,1987)が開発され,強い固定力が確保されたが,VA損傷のリスクが高かった。さらに,Goelら(文献1)が先駆けとなり,Harmsら(文献2)によって改良されたC1外側塊スクリューとC2椎弓根スクリューによるロッドシステム(Goel-Harms technique)は,安全で固定力が強く,整復可能なことから,現在広く受け入れられている。さらに近年では,これらのシステムを使って前方要素の強い症例でも間接的除圧ができるようになってきた(文献3)。
一方で,高度前方圧迫例,整復困難例では経口手術の適応となる。従来は,経口手術ゆえの合併症(術後感染,髄膜炎,咽頭症状など)が多く報告されたが,後方インスツルメントの進歩により経口除圧のみに特化できるようになり,より安全性が増した。これらのインスツルメントの進歩はCVJ手術に大きな進歩をもたらしたと言える。
1) Goel A, et al:Acta Neurochir(Wien). 1994;129(1-2):47-53.
2) Harms J, et al:Spine(Phila Pa 1976). 2001;26(22):2467-71.
3) Yoshizumi T, et al:Neurosurg Rev. 2014;37(3):519-24;discussion 524-5.