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ABO血液型不適合腎移植

No.4758 (2015年07月04日発行) P.59

大山 力 (弘前大学泌尿器科教授)

畠山真吾 (弘前大学泌尿器科講師)

登録日: 2015-07-04

最終更新日: 2016-10-26

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かつてABO血液型が一致もしくは不一致(血液型が合わないが免疫応答が起きない組み合わせ)以外の腎移植は禁忌とされていたが,現在では適切な処置を行えば血液型不適合の組み合わせ(AB型からA,B,O型へ,A型からB,O型へ,B型からA,O型へ)でも腎移植が可能になった(文献1)。ABO血液型不適合腎移植では通常の免疫抑制薬に加え,(1)二重濾過血漿交換(double filtration plasmapheresis:DFPP)や血漿交換などによって抗A抗体・抗B抗体を除去し,(2)抗体産生を強力に抑制する免疫抑制薬を使用し,(3)抗凝固療法で血栓形成を予防する,ことできわめて良好な腎生着率が得られている。
以前は,血液型不適合移植の腎生着率は血液型適合腎移植よりも10%程度低く,脾臓摘出(脾摘)も必須とされ患者の負担も大きかったが,リツキシマブ(抗CD20抗体)の登場により脾摘が不要となり,5年生着率95%程度と血液型適合腎移植と同等の治療成績となっている。一方で,過剰な免疫抑制によりウイルス感染症などの合併症のリスクが増すという課題も抱えている。
血液型を合わせて移植を実施するドナー交換プログラムが発達している諸外国では,血液型不適合腎移植はそれほど多用されてはいない。しかし,献腎ドナーがきわめて少ないわが国では,血液型不適合腎移植は生体腎移植の30%を占めるまでに至っており,特に夫婦間腎移植が増加している。現在,新規免疫抑制薬や抗体薬品の臨床研究が進行中であり,さらなる生着率の向上が期待される。

【文献】


1) Takahashi K, et al:Transplant Rev(Orlando). 2013;27(1):1-8.

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