大腸内視鏡検査(CS)は,早期大腸癌およびハイリスク腺腫の診断と切除により大腸癌死亡を減少させる。反対に,CSで腺腫を見落とすと,その後の大腸癌死亡のリスクは増大するであろう。内視鏡医が行うCSにおいて,1個以上の腺腫が発見される割合〔腺腫発見率(adenoma detection rate:ADR)〕はCSの質の指標として提唱され(文献1),男性患者では25%以上,女性患者では15%以上が質の適正な指標とされる。しかし,ADRは内視鏡医によるばらつきが大きいため,ADRがCS後の検査間に診断される大腸癌およびがん死亡のリスクを予測する因子となるかは不明であった。
この課題を検討した研究(文献2)では,健康ケアのデータを用いてADRとCS後の6カ月~10年の間に大腸癌(中間期がん)と診断されるリスクおよび,大腸癌死亡リスクとの関連を検討した。136人の専門医による31万4872件のCSを分析した結果,ADRは7.4~52.5%と大きく分布する一方,ADRと中間期大腸癌のリスクの間には明瞭な負の相関が認められた。すなわち,個々の内視鏡医のADRが1.0%低下すると中間期大腸癌診断のリスクは3.0%上昇するという結果であった。これは了解可能ではあるものの,内視鏡医にとっては相当に衝撃的な結論である。
以上は米国での臨床成績であり,内視鏡医の技術,病変拾い上げの熱意,読影術などに差異があるため日本の実情にそのまま応用はできないが,今後「日本ではこの結果は適応されない」というエビデンスを示す必要があろう。
1) Rex DK, et al:Am J Gastroenterol. 2006;101(4):873-85.
2) Corley DA, et al:N Engl J Med. 2014;370(14):1298-306.