勃起障害(erectile dysfunction:ED)とは,満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか,または維持できない状態である。このような状態が少なくとも3カ月間持続することが診断の条件であるが,外傷や手術などによるEDの場合に限っては,3カ月以前に診断できる(文献1)。
加齢,喫煙,高血圧,糖尿病,脂質異常症,肥満と運動不足,うつ症状,下部尿路症状/前立腺肥大症,慢性腎臓病,睡眠時無呼吸症候群,神経疾患,不妊症および薬剤が,EDのリスクファクターである。
検査では,理学的所見のほか,血液生化学,血糖,脂質に関連した検査を行う。性腺機能低下が疑われる場合は,LH,FSH,遊離(総)テストステロンを測定する。器質的異常の診断には,プロスタグランジンE1(PGE1)の陰茎海綿体注射による勃起テストを行う。
治療には,まずPDE5阻害薬(シルデナフィル,バルデナフィル,タダラフィル)を用いる。PDE5阻害薬が無効あるいは禁忌の場合には,PGE1陰茎海綿体注射や陰圧式勃起補助具を使用するが,日本では治療としての陰茎海綿体注射は承認されていない。そのほか,低テストステロン症例にはテストステロン補充療法を行う。若年者の外傷性動脈障害によるEDには,動脈バイパス術が推奨されている。心因性EDにはカウンセリングを行う。あらゆる治療が無効なEDに対しては,陰茎海綿体内プロステーシス挿入術を行う。
1) 日本性機能学会 ED診療ガイドライン2012年版作成委員会, 編:ED診療ガイドライン2012年版. リッチヒルメディカル, 2012, p10.