2003年のLancet(文献1)において,男性不妊症に対する精索静脈瘤根治術の妊娠および出産への貢献が疑問視されてから,現在に至るまで様々な議論がなされてきた。しかし近年,study designの優れたrandomized clinical trialがなされるようになり,精索静脈瘤根治術が自然妊娠の改善に寄与することが明らかになってきた(文献2)。さらに,自然妊娠のみならず,顕微授精での妊娠率,出産率の改善にも寄与するとの報告も散見されるようになった(文献3)。つまり,男性不妊症治療としての精索静脈瘤手術の有用性についてはある程度証明され,議論は一区切りついたと言ってもよい。
解剖学的理由から,左側がほとんどである。時に疼痛を伴うことがあり,この場合は男性不妊の有無にかかわらず手術の適応になる。精索静脈瘤手術は,顕微鏡下低位結紮術,高位結紮術および腹腔鏡下手術に大別される。顕微鏡下低位結紮術は,ほかの手術と違い局所麻酔下での小切開手術が可能である。浅鼠径輪から約2cm尾側を1.5cm程度皮膚切開することにより精索が露出される。内精系・外精系静脈ともに処理でき,リンパ管を温存しやすく,再発ならびに術後の陰嚢水腫の合併症が少ない。
今後は,生殖補助医療技術の進歩・普及に伴って,精索静脈瘤手術の不妊治療における位置づけが課題となってくると考えられる。
1) Evers JL, et al:Lancet. 2003;361(9372):1849-52.
2) Abdel-Meguid TA, et al:Eur Urol. 2011;59(3):455-61.
3) Shiraishi K, et al:Int J Urol. 2012;19(6):538-50.