脳室穿破術(神経内視鏡手術によるもの)は,水頭症に対する標準的治療として2002年に保険収載された(K174-1)。これに伴い,古典的な中枢神経奇形が再考されている。対象は第四脳室蓋板の前膜様部,すなわち小脳虫部原基の発生異常であるDandy-Walker奇形とDandy-Walker variant,後膜様部,すなわちMagendie孔の原基が開口しないBlake’s pouch cyst,くも膜由来のmega cisterna magna(巨大大槽)の4つである(文献1)。
これらはかつて第四脳室出口閉塞性疾患の名でまとめられていたが,後に閉塞病態は必須ではないとされた。画像による鑑別は難しく,Dandy-Walker奇形と同variantの境界は小脳虫部形成不全の程度の差でしかない。Blake’s pouchと巨大大槽は嚢胞膜の起源が異なっても,第四脳室と嚢胞の連続性所見は同じである。以上のように,疾患名と治療法が1対1で対応しないことも混乱の原因となっている。
第四脳室とくも膜下腔が非交通性なら,疾患名にかかわらず第三脳室穿破術の効果が期待できるが,実際には交通性水頭症と同様に脳室腹腔シャント術が必要になることがある。そのような例はDandy-Walker奇形に多い。一方,巨大大槽で治療を要する例は少ない。結果,低頻度ながらも第三脳室穿破術の適応になることが多いBlake’s pouch cystが再注目された。
1) Azab WA, et al:Surg Neurol Int. 2014;5:112.