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多剤耐性緑膿菌の治療 【多剤耐性緑膿菌に対してコリスチンが使用できるようになったが,乱用に注意】

No.4785 (2016年01月09日発行) P.47

田内久道 (愛媛大学感染制御部准教授)

安川正貴 (愛媛大学血液・免疫・感染症内科学教授)

登録日: 2016-01-09

最終更新日: 2016-10-26

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緑膿菌は,主に水回りなどの生活環境に普遍的に存在する細菌であり,その病原性は高いものではない。しかし,緑膿菌は本来備わっている消毒薬や抗菌薬に対する耐性だけでなく,各種抗菌薬の開発に伴い次々と薬剤耐性を獲得していった細菌である。現在,広域β-ラクタム薬,アミノ配糖体,フルオロキノロンの3系統の薬剤に対して耐性を示す緑膿菌を多剤耐性緑膿菌(multiple-drug-resistant Pseudomonas aeruginosa:MDRP)と呼んでいる。
MDRPは薬剤耐性を獲得してはいるが,その病原性が増しているわけではない。血液や腹水などの本来無菌である部位から菌が検出された場合や,喀痰や創部などから菌が多量に検出され,白血球による菌の貪食像などの炎症所見が確認された場合は抗菌薬の投与が必要であるが,保菌状態の患者への抗菌薬の投与は通常不要である。
有効な抗菌薬がないMDRPに対して,2015年5月よりコリスチンがわが国でも使用可能になった(文献1)。コリスチンは,かつてわが国でも使用されていた抗菌薬であるが,安全性の問題から使用中止になっていた。コリスチンは,腎障害が高率にみられ,他剤との併用療法が勧められているなど,決して使いやすい薬ではない。また,欧米では既にコリスチンへの耐性菌も確認されており,乱用により耐性株が増加することのないよう計画的に使用すべきであることを強調しておきたい。

【文献】


1) 日本化学療法学会:日化療会誌. 2015;63(3):289-329.

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