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産科出血への対応 【高次施設への搬送,輸血など医療資源の積極的投資で防ぎたい妊産婦死亡】

No.4791 (2016年02月20日発行) P.53

板倉敦夫 (順天堂大学産婦人科教授)

登録日: 2016-02-20

最終更新日: 2016-10-26

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妊娠末期の子宮─胎盤血流量は毎分450~600
mLと多く,分娩時は子宮壁の胎盤剝離面からの多量出血に見舞われやすい。日本は先進国ではめずらしく,分娩の50%が診療所で行われている分散型の分娩システムを持つ。このシステムは自宅近くに産婦人科専門医がいるため,妊娠中の異常に迅速に対応でき,世界最低の周産期死亡率を支えている。しかし,施設のマンパワーや多くの医療資源を必要とする分娩時の産科出血に対しては,分散型は弱点を持つ。こうした産科出血への対応は,各施設の能力と医師の技量に任せられていた。
産婦に異常が発生した際に地域の基幹施設に搬送することも多く,出血に対して同一のアルゴリズムで対応することが望まれていた。また,産科出血の特徴としては,血液凝固障害を起こしやすく,輸血に凝固因子を補充する必要度が他科の出血より高い。こうした特徴が広く知られるようになり,2010年に「産科危機的出血への対応ガイドライン」が公表され,輸血開始基準,治療方針,高次施設への搬送基準が示された。
これまで輸血を避けることが良い医療の見本であるかのような風潮がみられたが,妊産婦死亡を回避するために積極的に医療資源を投資することが望ましい,と変貌している。このような努力の結果,妊産婦死亡数は2005年の62人から13年には36人まで減少している。周産期死亡率とともに妊産婦死亡率も世界最低にすべく,減少に向けての努力はまだまだ必要であるが,女性が人生の中で最も輝く日に,不幸が訪れることは確実に減少している。

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