肺癌の治療は,手術,放射線治療,化学療法が3つの大きな柱であったが,非小細胞肺癌に対して抗programmed cell death-1(PD-1)抗体薬ニボルマブの適応が2014年に承認され,新たに免疫療法が加わることとなった。
がん細胞がリガンドであるPD-L1やPD-L2を発現すると,細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte:CTL)表面のPD-1と結合して免疫寛容状態となり,細胞傷害性が抑制される。ニボルマブは,この経路を遮断して免疫寛容状態を解除し,活性型CTLによるがん細胞傷害性を正常に機能させる。ドセタキセルを対照に,ニボルマブのセカンドラインの治療効果を検討した比較第3相試験において,扁平上皮癌,非扁平上皮癌のいずれにおいても有意に生存期間を延ばす結果となった(文献1)(文献2)。
しかし,バイオマーカーが不明確であること,治療効果の評価法が定まっていないこと,非常に高価でfinancial toxicity(経済的毒性)による医療経済への影響が懸念される点など,治療に際して課題は多い。また,間質性肺炎や甲状腺機能異常,腸炎などの自己免疫疾患を副作用として認めることは,使用に際して十分な注意を要する。
分子標的治療に加え,免疫療法の幕開けによって,肺癌治療が長期予後をめざせる新たな時代を迎えつつあることは間違いない。
1) Brahmer J, et al:N Engl J Med. 2015;373(2):123-35.
2) Borghaei H, et al:N Engl J Med. 2015;373(17):1627-39.