近年,世界的な移植ドナー不足により植込み型補助人工心臓(VAD)の需要は急激に高まっている。わが国でも移植非適応患者へのdestination therapy(DT)の治験開始に向けた準備が整いつつある。
植込み型VADの至適装着時期は,機器の進歩に伴い早期から考慮される傾向がある。2015年,外来通院中の心不全患者に着目し薬物治療続行群とDT-VAD治療群を比較したROADMAP studyが報告(文献1)された。本研究はHMⅡRを使用機器とし,VAD施設以外やVADを拒否した患者も組み込んだ観察研究で,実臨床を反映している。VAD群は薬物治療群と比し重症度が高かった(NYHA Ⅳ度:52% vs. 25%)。薬物治療群の4割が手術に消極的あるいは機器に依存して生きたくないと回答。観察開始1年後にVAD群で77%の患者がNYHAⅠ~Ⅱ度となった。生存率(80% vs. 64%,P=0.033)とQOLの改善やうつ症状の消失もVAD群でより良好で,有害事象(出血,感染,血栓塞栓症)はVAD群でより多く発生した。本研究結果は,外来通院可能なレベルの心不全患者に対してもVADのリスクとベネフィットを十分に説明し,治療オプションとして提示すべきではないかと,VAD専門施設以外の医師らに対するメッセージを伴っている。
今後,わが国での移植待機期間のさらなる延長,高齢心不全患者増加への対処は喫緊の課題で,外来通院可能な患者に対するDT-VAD使用の日本独自のプロトコルを検討すべき時期かもしれない。
1) Rogers JG, et al:Am Heart J. 2015;169(2):205-10.e20.