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進行直腸癌に対する術前化学放射線療法(CRT) 【欧米では標準治療として定着し,エビデンスによりわが国でも実施施設が増加】

No.4808 (2016年06月18日発行) P.56

大谷研介 (東京大学腫瘍外科)

渡邉聡明 (東京大学腫瘍外科教授)

登録日: 2016-06-18

最終更新日: 2016-10-29

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下部直腸や肛門管の進行癌では,術後の局所再発が他部位の大腸癌と比較して多く,局所制御が重要である。また,直腸癌手術では肛門機能,性機能,排尿機能の温存も重要な課題である。
『大腸癌治療ガイドライン 医師用2014年版』には,進行直腸癌に対する術前放射線療法(RT)は腫瘍縮小によるがん遺残のない切除率の向上と肛門括約筋の温存を目的として,臨床診断でがんの深達度がT3以深(固有筋層を越える浸潤),またはリンパ節転移陽性の症例を対象とすると記載されている。欧州で行われた,手術単独群と術前RT併用群を比較したランダム化比較試験では局所制御率は併用群で有意に良好であった。また,術前化学放射線療法(CRT)と術前RTを比較したランダム化比較試験では,局所再発率がCRT群で有意に低い結果であった(文献1)。そのため,術前CRTが欧米では標準治療となっている。一方,わが国では進行下部直腸癌に対して直腸間膜全切除+側方リンパ節郭清を行うことにより良好な局所制御率,生存率を得ている。しかし,術前RTを行い予防的側方リンパ節郭清は省略することにより排尿障害,性機能障害が軽減され,術後生存期間に差が認められないことが示され(文献2),わが国でも術前CRTを実施する施設が増えてきている。
現在,RTに併用する化学療法の最適なレジメンや術前CRTの効果予測などが重要な課題として検討されている。

【文献】


1) Bosset JF, et al:N Engl J Med. 2006;355(11):1114-23.
2) Nagawa H, et al:Dis Colon Rectum. 2001;44(9):1274-80.

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