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急性腎障害(AKI)から慢性腎臓病(CKD)への移行に注意  【AKI発症後は生命予後が悪化し,いったん腎機能が回復してもCKDへの移行リスクが高い】

No.4809 (2016年06月25日発行) P.48

渡辺裕輔 (埼玉医科大学腎臓内科講師)

岡田浩一 (埼玉医科大学腎臓内科教授)

登録日: 2016-06-25

最終更新日: 2016-10-29

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近年,急性腎障害(AKI)への関心が高まっている。KDIGO分類など診断基準が統一されたことに加え,患者数の増加が報告されているためである。米国では2000年以降,透析を必要とするAKIの患者は年10%ずつ増加し,この10年で2倍以上になっている(文献1)。高齢,糖尿病,慢性疾患など感受性を持つ患者に,急性心不全,敗血症,手術,ヨード造影剤投与などの曝露が加わるとAKIが発症しやすくなる。ひとたびAKIを発症すると,その後の生命予後が悪化する(文献2)。さらに,いったん腎機能が回復しても,その後,慢性腎臓病(CKD)に移行するリスクが高い(文献3)。
AKIがCKDに移行する機序として,ラットの虚血再灌流モデルでは,髄質における尿細管周囲毛細血管の密度が減少しており,尿濃縮能低下と線維化に寄与したとの報告があるが,いまだ不明な点も多い(文献4)。現状ではAKI後の経過観察が十分に行われていないので, CKDへの移行を防ぎきれず転帰を改善させる機会を逸している可能性がある。

【文献】


1) Hsu RK, et al:J Am Soc Nephrol. 2013;24(1):37-42.
2) Lassnigg A, et al:J Am Soc Nephrol. 2004;15(6):1597-605.
3) Bucaloiu ID, et al:Kidney Int. 2012;81(5):477-85.
4) Basile DP, et al:Am J Physiol. 2001;281(5):F887-99.

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