小児の重症心不全に対する治療として,あらゆる内科的治療をつくしても心不全の改善が得られない場合,心臓移植がその治療法のひとつとなる。しかし,小児からの臓器提供が限られた現状では,移植待機期間は長く,移植までの橋渡しとして補助人工心臓を要する場合が少なくない。
これまで日本では体格の小さな小児に使える補助人工心臓はなかったが,2015年6月,厚生労働省はドイツのBerlin Heart社が開発した小児用体外設置式補助人工心臓システム(EXCORR Pediatric)の国内販売を承認,同年8月1日付で保険適用とした。「医療ニーズの高い未承認医療機器」として選定され,申請から承認まで約7カ月という異例の迅速審査であった。EXCORRは10~60mLの6種類のポンプを,体重3kg程度の乳児から60
kg程度の小児まで使いわけることができる。同機器の国内治験症例9例中7例が心臓移植に到達し,待機中の2例を含め全例が生存しており,わが国の補助人工心臓の管理技術が優れていることも裏づけられた。これで国内でも,重症心不全に陥った小児を救命できる道が開かれたことになる。
ただし,国内で小児の脳死臓器提供がなければEXCORRをつけた小児を救うことはできない。10年の臓器移植法改正以降15年末まで,国内で15歳未満からの脳死臓器提供は10例である。この中には心臓移植待機中に脳死となった子どもの心臓以外の臓器提供も含まれる。移植に関する正しい情報が伝えられ,移植医療を考える機会が増えることが重要で,臓器提供をしない意思も,臓器提供をする意思も同等である。