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大腸癌に対する腹腔鏡手術 【手術件数が増加し,適応も拡大】

No.4816 (2016年08月13日発行) P.49

西川武司 (東京大学腫瘍外科)

渡邉聡明 (東京大学腫瘍外科教授)

登録日: 2016-08-13

最終更新日: 2016-10-30

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2004年以降,大腸癌に対する開腹手術と腹腔鏡手術を比較した大規模臨床試験の結果が報告された(文献1)。それらの試験において,腹腔鏡手術は開腹手術と比べて短期成績が良好であり,リンパ節郭清個数や術後合併症に差を認めなかった。長期予後に関しても,多くの試験で同等であった。また,当初腹腔鏡手術に特有の再発形式と言われていた腹壁再発に関しても差がなかった。
こうした結果や手術手技,デバイスの進歩を受け,腹腔鏡手術件数はわが国で右肩上がりに伸びている。National Clinical Database(NCD)のデータでは,結腸右半切除術の5割弱が,低位前方切除術においては約6割が腹腔鏡手術で行われている。しかしながら,その割合は病院によって差があり,ほとんどすべてを腹腔鏡手術で行う施設がある一方,大部分が開腹手術の施設もある。さらに,これまで困難とされていた横行結腸,巨大な腫瘍,stageⅣ,隣接臓器浸潤癌,イレウス/穿孔などの緊急手術,再発癌,高度肥満,広範な癒着,狭骨盤に対して,腹腔鏡手術が有用であるとの報告もみられてきている。
腹腔鏡手術は,拡大視効果により良好な視野が得られることは有利な点ではあるが,鉗子や器械操作の制限・限界があり,手術時間の延長や根治性を損なう危険性もある。術者や施設の習熟度に応じて腹腔鏡手術の適応の範囲を決めていくことが大事であり,安全な普及と適応拡大が今後の課題である。

【文献】


1) Bonjer HJ, et al:N Engl J Med. 2015;372(14):1324-32.

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