日本人の死因別死亡割合は、心疾患が2位、脳血管疾患が4位で、合わせると1位のがんに迫る死亡率となる。また要介護に至る原因の割合は脳血管疾患が最も高い。こうした状況を改善するため、循環器病の診療提供体制の構築に向けた議論が厚労省検討会で進んでいる。厚労省がイメージしているのは、がん診療提供体制のような体制だ。
近年、循環器病の高度医療が普及してきている。心血管疾患では、一律に禁忌とされてきた急性心筋梗塞、左冠動脈主幹部病変等に対する冠動脈ステントの適用が2012年に見直された。大動脈疾患に対するステントグラフト治療の件数も増えている。脳卒中では、2012年に脳梗塞に対する血栓溶解(tPA)療法施行可能時間が3時間から4.5時間へ延長。脳梗塞発症後8時間以内では血栓除去術が考慮されるようになった。こうした治療の進歩を国民全体が享受できる体制が必要だ。
気になるのは「脳卒中・循環器病対策基本法案」の行方だ。同法案は循環器病対策を総合的・計画的に推進することを目的に超党派の議員立法として検討されている。循環器関連の15学術団体と3患者団体で構成する「脳卒中・循環器病対策基本法の成立を求める会」は今年5月、国会議員に対し、同法の早期成立を強く求めたが、先の国会では提出に至らなかった。
診療提供体制のみならず、循環器病の一次予防(学校教育、国民啓発)、二次予防(健診、診療提供体制)、三次予防(リハビリ、在宅医療、介護、社会支援)という循環器病対策全体を前進させ、その実効性を高めるためには、法律に基づく国、自治体の支援が必要だろう。循環器病対策の基本法の成立が待たれる。