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災害医療と災害の公衆衛生【新しい時代に求められる災害医療,原子力災害の公衆衛生】

No.4834 (2016年12月17日発行) P.55

安村誠司 (福島県立医科大学公衆衛生学教授)

登録日: 2016-12-15

最終更新日: 2016-12-08

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「医師国家試験出題基準 平成21年版」(厚生労働省)では,「【医学総論】Ⅰ保健医療論の6 地域保健,地域医療」の中項目「F 災害医療」の小項目に,「1.災害時保健医療活動,2.災害拠点病院,3.トリアージ,4.広域災害医療」があった。2011(平成23)年3月11日に東日本大震災が発生し,「医師国家試験出題基準 平成25年版」では,上記の4つの小項目に加え「医療救護班」が追加され,「備考」として「災害派遣医療チーム<DMAT,disaster medical assistance team>」と記載されている。

東日本大震災では,東京電力福島第一原子力発電所の事故により放射性物質が飛散し,福島県では15万人以上が強制避難させられ,6年目になる現在も多くの方が帰還できず不自由な生活を強いられ,原子力災害の問題の大きさが浮き彫りになった1)。原子力災害への対応は,狭義の医療のみでは対応できず,公衆衛生との密な連携が必須である2)
さらに,わが国では,広島・長崎の原爆,東海村JOC臨界事故などがあったが,国民全体はもとより,医師の放射線・放射能に関する知識が不十分であったことも,今回の東日本大震災によって明らかになり,医師国家試験でも近年,放射線に関する出題が増加した。

医師には,時代により変化した状況への高い対応能力が必要である。知識としての災害医療でなく,実践としての災害医療,さらに原子力災害への公衆衛生対応も医師に強く求められてきている。

【文献】

1) 安村誠司, 編:原子力災害の公衆衛生―福島からの発信. 南山堂, 2014, p1-390.

2) 安村誠司:公衆衛生. 2016;80(10):714-5.

【解説】

安村誠司 福島県立医科大学公衆衛生学教授

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