高IgG血症,低補体血症,高IgE血症を伴い,中高年男性に好発する間質性腎炎である
腎実質の多発性造影不良域は最も高頻度に認められる特徴的CT画像所見である
組織学的に鑑別すべき疾患はANCA陽性の血管炎である
ステロイドが著効する
再燃の早期診断に補体のモニタリングが有用である
IgG4関連腎臓病はIgG4関連疾患の腎病変である。組織病理所見としては間質性腎炎を呈する1)。尿所見は陰性か軽微な蛋白尿,血尿であり,約6割の症例は腎機能低下を伴って発見される2)3)。腎機能の低下速度は急性から慢性進行性まで症例により様々である。膜性腎症を合併しやすいことが注目されており4),このような場合,高度の蛋白尿を認め,臨床的にはネフローゼ症候群で発見される。血液検査所見で高IgG血症,低補体血症,高IgE血症を合併しやすいという特徴があり,これらのいずれかを伴った腎機能低下症例をみた場合にIgG4関連腎臓病が疑われる1)~3)。
IgG4関連疾患では,単一臓器にのみ病変を認める場合と多臓器に病変を認める場合があるが,IgG4関連腎臓病の場合,腎臓単独のことは稀である。一部の症例では,膵臓や唾液腺病変が先に診断され,多臓器病変の全身精査中に造影CTによる画像診断で腎病変が発見される。このような例では,腎機能が正常な例も多く含まれる。IgG4関連疾患は中高年の男性に発症しやすく,アレルギー疾患を伴いやすいという特徴がある。抗核抗体は約30%の症例で陽性であるが,二本鎖DNA抗体や抗SSB抗体などの疾患特異性の高い自己抗体はほとんど陽性となることはない。したがって,日本では,IgG4関連疾患は,自己免疫性疾患というよりはむしろアレルギー疾患として認識されている。
2011年,日本腎臓学会のワーキンググループはIgG4関連疾患包括診断基準との整合性を考慮したIgG4関連腎臓病の診断基準(表1)を作成した2)3)。腎臓領域に含まれる病変部位は,間質性腎炎に代表される腎実質と腎盂病変,尿管病変があるが,この診断基準は腎実質と腎盂病変をカバーするよう作成された。包括診断基準5) と同様に,臨床所見,血液所見,病理組織所見の3つの構成要素でつくられ,これらの組み合わせで診断される。基本的にどちらの基準でも,すべてを満たすものを確定診断群(definite),血清IgG4濃度高値を欠くものを準確診群(probable),病理所見を欠くものを疑診群(possible)と診断する。
包括診断基準の臨床所見は「臨床的に単一または複数臓器に特徴的なびまん性あるいは限局性腫大,腫瘤,結節,肥厚性病変を認める」と定義される。しかし,腎臓では必ずしも腫大,腫瘤を認めるとは限らない。そこで,特徴的な画像(後述),血液検査所見を伴う腎障害のどちらか一方を満たすこととして,包括診断基準の臨床所見に対応させた。病理組織所見は腎の場合,IgG4陽性形質細胞浸潤と線維化を伴う尿細管間質性腎炎(tubulointerstitial nephritis;TIN)が重要である1)6)7)。また,腎盂病変のみの場合,生検は困難なため,腎臓以外の臓器の病理組織所見で代用して診断できるよう作成された。この診断基準を用いると,検討に用いた41例中39例(95%)が確定診断群に当てはまる。
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