胃癌に対する腹腔鏡手術は,特有の動作制限があるものの,拡大視効果による手術精度の向上や低侵襲性など多くの利点があり,広く普及しつつある。
腹腔鏡下胃癌手術のエビデンスとしては,日本臨床腫瘍グループ(JCOG)による第2相臨床試験(JCOG0703)1)があり,T2N0までの胃癌に対する腹腔鏡下幽門側胃切除術(LDG)の安全性が示された。現在,第3相臨床試験(JCOG0912)が行われており,既に症例登録は終了している。また,韓国からも同様に安全性を示す報告がなされている2)。これらの臨床試験の結果を受けて,わが国の『胃癌治療ガイドライン 第4版』では,cStage Ⅰの胃癌に対して,LDGが日常診療の選択肢として位置づけられるようになった。一方,進行胃癌に対するLDGでは,わが国のJLSSG0901試験(第2/3相)3)や中国のCLASS-01試験(第3相)4)で,技術的な安全性が示されたものの,長期予後については今後の解析を待たねばならない。
cStage Ⅰの上部胃癌に対する腹腔鏡下胃全摘術(LTG)および腹腔鏡下噴門側胃切除術(LPG)については,JCOG1401(第2相試験)が2015年より登録開始となっており,現在進行中である。
今後,エビデンスの蓄積や機器の進歩に伴って,腹腔鏡下胃癌手術はさらに増加していくものと考えられる。
【文献】
1) Katai H, et al:Gastric Cancer. 2010;13(4):238-44.
2) Kim W, et al:Ann Surg. 2016;263(1):28-35.
3) Inaki N, et al:World J Surg. 2015;39(11): 2734-41.
4) Hu Y, et al:J Clin Oncol. 2016;34(12):1350-7.
【解説】
1)小濵和貴,2)坂井義治 京都大学消化管外科 1)准教授 2)教授