高齢者肺炎の病因としては夜間睡眠中の微量誤嚥(不顕性誤嚥)が重要である
加齢により嚥下機能が低下するため,すべての高齢者が肺炎発症リスクを有する
比較的ゆっくり進行するため,元気がない,食欲がないなどの臨床症状が重要である
嚥下障害は完治しないため反復性であることが多い
わが国では肺炎が全死亡原因の第3位となり,脳卒中を上回る死亡者が出ている。しかし,肺炎死亡率が高くなっているわけではない。これは,死亡率の高い超高齢者の肺炎患者全体に占める割合が高くなっていることの結果である。したがって,肺炎診療が後退しているわけではなく,感染症としての肺炎治療のみでは治癒しない超高齢者が増加していることを意味している。
肺炎診療の現状は,これを如実に示している。肺炎入院患者はほとんどが70歳以上であり,入院する肺炎患者は高齢者であると言える(図1)1)。
高齢者肺炎を病因的に誤嚥と関連するものと関連しないものとにわけると,大半が誤嚥と関連する誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)である(図2)2)。誤嚥には食物にむせて誤嚥する場合や食物と関係なく唾液などを誤嚥する場合があり,誤嚥の病態,内容も多岐にわたる。
感染症としての肺炎を起こす誤嚥は,食物の誤嚥よりは細菌を含む唾液などの分泌物を夜間睡眠中に無意識のうちに誤嚥する不顕性誤嚥である場合が多い。したがって,絶食にしても,胃瘻を留置しても肺炎は生じうる。しかし,食物の誤嚥,特に油を含む食物や粘稠度の高い食物の誤嚥では,下気道定着菌による肺炎を発症する場合があり,これも問題である。
そこで,嚥下障害をきたす病態をよく知っておく必要がある。
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