No.4839 (2017年01月21日発行) P.55
日笠友起子 (岡山大学麻酔・蘇生学)
森松博史 (岡山大学麻酔・蘇生学教授)
登録日: 2017-01-19
最終更新日: 2017-01-17
2007年1月,全身麻酔に使用可能な超短時間作用性麻薬性鎮痛薬のレミフェンタニルがわが国で発売された。
レミフェンタニルは血中や組織中の非特異的エステラーゼにより急速に加水分解を受ける。半減期が4~8分と非常に短く,蓄積性がない,調節性に優れた麻薬である。効果発現,消退が速やかであり,長時間手術での使用後も覚醒が良好である。また,肝臓,腎臓での代謝が非常に少なく,肝または腎機能障害を有する患者でも安全に使用可能である。さらに,術中ストレスホルモン分泌を抑制するとも言われる1)。
一方,効果消失が早いことの弊害もある。投与中止により,鎮痛作用がたちまち消失するため,確実な術後鎮痛が必要となる。非ステロイド性抗炎症薬やアセトアミノフェン,硬膜外麻酔や神経ブロックなどを併用する。レミフェンタニルの作用消失前にモルヒネやフェンタニルを併用する方法も効果的である。レミフェンタニル使用後のシバリングも問題である。これはμオピオイド受容体の占拠率が急速に低下することで生じるwithdrawal syndromeのひとつとして考えられている2)。
16年には小児に対する安全性・有効性が評価され,全身麻酔の維持における鎮痛の適応承認を得た。フェンタニルが主流であった小児の麻酔管理も,今後変わっていくと期待される。
【文献】
1) 長田 理:臨麻. 2009;33(6):1013-24.
2) Nakasuji M, et al:Br J Anaesth. 2010;105(2): 162-7.
【解説】
日笠友起子,*森松博史 岡山大学麻酔・蘇生学 *教授