大腸癌に対する腹腔鏡下手術(lap)は,一部施設では局所進行症例に対しても行われている。結腸癌におけるlapはBarcelona,COST,COLOR,MRC-CLASICCの4つの無作為化比較試験において,開腹手術(open)より手術時間は長いものの出血量は少なく,長期予後に有意差がないことが示された。しかし,隣接臓器直接浸潤を伴うT4b結腸癌は上記試験の除外基準とされているため,十分なエビデンスがない。
T4b症例におけるlapは,視野展開や手術操作が制限され,浸潤部と正常組織との境界が確認できなかったり,合併切除後再建が技術的に困難な場合がある。また,術中開腹移行症例では合併症発生率が高く,腫瘍学的予後も劣る可能性が指摘されている。一方,その最大の武器である局所拡大視効果は,より精緻な切離ラインの認識を可能にするため,症例や術者の経験によってはむしろメリットが大きい場面も考えられる1)。近年,比較的小規模ながら諸施設からT4b結腸癌に対するlapの成績が報告され,その安全性と腫瘍学的妥当性が実証されてきている。当科で行った後向き解析でも,lapは尿路系浸潤症例を除いて完遂率や短期成績は良好で,開腹移行症例も含めて長期予後に有意差を認めなかった2)。
lapのメリットと限界を知り,安全にR0手術を行うために,症例ごとに術前評価と術中判断を冷静に行っていくことが重要と考えられる。
【文献】
1) 高橋 亮, 他:外科. 2016;78(3):248-55.
2) Takahashi R, et al:Asian J Endosc Surg. 2016. in press.
【解説】
高橋 亮, *坂井義治 京都大学消化管外科 *教授