日本肺癌学会の肺がん医療向上委員会は1月30日、免疫チェックポイント阻害剤の最新知見などがん免疫療法に関するセミナーを開催した。講演した河上裕氏(慶大、写真)は、「がん免疫療法は免疫チェックポイント阻害療法の登場で標準治療の仲間入りをした」と指摘。①効果が期待できる症例を治療前・治療早期に選択するバイオマーカーの同定、②抗腫瘍免疫ネットワークを総合的に制御する複合免疫療法の開発、③患者の免疫状態に応じた個別化免疫療法の構築─の3点が今後の課題になるとの見方を示した。
現在、抗PD-1抗体のバイオマーカー候補としてPD-L1の発現率などが報告されているが、河上氏は、「がん細胞のDNA突然変異が多いがんほど免疫チェックポイント阻害剤が効くという研究結果が出ている」と紹介。自身の研究チームが2003年に、「DNAミスマッチ修復機構が機能していない大腸がんでは変異抗原に対する免疫応答が起こるため、免疫療法が効きやすいと予測した通りになった」と述べた。
このほか、中西洋一氏(九大)は進行非小細胞肺がんにおける薬剤選択のアルゴリズムを提示。PD-L1発現率で薬剤選択が決定することに触れ、「これまで診療ガイドラインのアルゴリズムは細胞診断から組織診断という流れで作ってきたが、今後はまずバイオマーカーの測定をしてからということになっていくかもしれない」との考えを示した。