去勢抵抗性前立腺癌ではアンドロゲン受容体を中心としたシグナル伝達系の関与が重要である
エンザルタミドはアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬である
アビラテロンはCYP17阻害薬で,精巣,副腎,前立腺組織内でアンドロゲン合成を阻害する
カバジタキセルは新規タキサン系抗癌剤で,ホルモン製剤との交差耐性の低さからも注目されている
男性ホルモン依存性である前立腺癌は,有転移症例に対し男性ホルモン遮断療法が第一選択となるが,治療に伴って病勢の進行が認められることが多い。現在,この病態を去勢抵抗性前立腺癌(castration-resistant prostate cancer:CRPC)と呼ぶ1)。近年,新規薬剤の開発が進み,わが国でもエンザルタミド,アビラテロン,そしてカバジタキセルの3製剤が2014年に使用可能となった。
本稿では,これらの薬剤の特徴を前立腺癌のアンドロゲン依存性の点から説明し,今後の位置づけを概説する。
生理的状態では,精巣から分泌されるテストステロン(testosterone)および主に副腎から分泌されるデヒドロエピアンドロステロン-サルフェート(dehydroepiandrosterone-sulfate:DHEA-S),アンドロステンジオン(androstenedione)などに代表される副腎性アンドロゲンが,男性のアンドロゲンの主な成分である。テストステロンの血液中濃度はDHEA-Sの約200分の1であるが2),アンドロゲン活性が高いため,前立腺細胞に対する活性は約95%がテストステロン由来である。
LH-RH(luteinizing hormone-releasing hormone)アゴニストおよびアンタゴニストからなるLH-RHアナログや外科的去勢療法によってテストステロン濃度は低下し,一般的に50ng/dL未満の去勢レベルとなる。一方,副腎から分泌されるDHEA-Sを中心とした副腎性アンドロゲンは,生理的状況ではアンドロゲン活性の5%程度とされているが,精巣性アンドロゲンが除去された状態ではそのアンドロゲン活性が重要となる。
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