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ディオバン公判判決の「分かりにくさ」[お茶の水だより]

No.4848 (2017年03月25日発行) P.13

登録日: 2017-03-23

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▶降圧薬「ディオバン」の臨床研究論文を巡る不正について、東京地裁は16日、ノバルティスファーマ元社員によるデータ改竄の事実は認定しつつ、旧薬事法の「虚偽広告」には当たらないとして、ノバ社と元社員に無罪判決を言い渡した。これを受け、翌17日の衆議院厚生労働委員会では、昨年5月から継続審議となっていた「臨床研究法案」の審議が再開。法案は全会一致で可決された。
▶同法案は、ディオバン事件を踏まえ、製薬企業から資金提供を受けて実施される医薬品の臨床研究に対し、モニタリングや監査の仕組みを設けることで、臨床研究と製薬企業の活動の透明性確保を目的としたものだが、同法案で“第2のディオバン事件”を「完全には防げない」ことは厚労省の神田裕二医政局長も17日の厚労委員会で認めている。一方で、神田氏は「抑止力にはなりうる」とし、開示させる資金提供情報の範囲など、政省令で可能な限り“抜け道”を塞ぐ意向も示した。
▶ディオバン事件が臨床研究に対する法規制の不備を浮き彫りにしたことは間違いない。しかし、事件が投げ掛けた問題はそれだけではあるまい。実施根拠が不明瞭な臨床研究に患者が参加させられ、データが不正に操作され、ありもしない臓器保護効果を謳い文句に広告が打たれ、多くの患者に医薬品が投与された。被験者・患者の権利が蔑ろにされた事実を忽せにしてはならないはずだ。
▶塩崎恭久厚労相は判決について「一般の方には分かりにくい内容であることは確かだ」と述べている。判決の法学的妥当性の評価は他に譲りたい。しかし、判決が一般国民の虚心坦懐な目に「分かりにくい」と映る一因は、人権的観点からの評価が置き去りにされているからではないだろうか。

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