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hybrid ERを用いることによる外傷診療手順の変化と未来【患者を移動させずにCT検査,開腹・開胸術,IVR,創外固定術などの止血術を行うことが可能】

No.4850 (2017年04月08日発行) P.62

船曵知弘  (済生会横浜市東部病院救命救急センター 副部長)

中森 靖 (関西医科大学総合医療センター救急医学科教授)

登録日: 2017-04-06

最終更新日: 2017-04-04

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  • 重症外傷診療手順はわが国では外傷初期診療ガイドライン(JATEC)の普及に伴い,標準化されたコースが全国で開催されており,診療の質の向上に貢献しています。しかしながら,hybrid emergency room(hybrid ER)の登場により,外傷診療手順が大きく変化してきているのではないかと思っています。既にコンピュータ断層撮影(computed tomography:CT)やinterventional radiology(IVR)の発展および普及に伴い,これらの位置づけなどは大きく変化しています。
    もちろん,すべての医療機関に導入されるのは不可能ではありますが,救命救急センターなどには今後,徐々に広まってくるのではないかと思います。その中で,先陣を切って導入された貴施設での外傷診療手順の変化を教えて頂きたく思います。また,今後導入される予定の施設等で,どのような問題点を解決していく必要があるのか,そして,全国の救命救急センターに必須のものになりうるのかに関して,関西医科大学総合医療センター・中森 靖先生にご教示頂ければと思います。

    【質問者】

    船曵知弘 済生会横浜市東部病院救命救急センター 副部長


    【回答】

    JATECコースの教えの柱は,「早期に適切な止血術さえ行えば救うことができる命を,いかにして守るか」ということです。JATECでは,超音波検査(focused assessment with sonography for trauma:FAST),胸部・骨盤X線検査,身体所見という限られた情報をもとに止血術の適応を判断するよう求めています。ここにCT検査が入っていない理由は,CT検査を行う20分が患者の生死をわける可能性があるからです。

    しかし,外傷初期診療に従事する医師にとっては過酷な状況です。FASTで腹腔内出血を認めるショックの症例に対して,出血部位も損傷形態もわからないまま開腹手術を行うわけです。多部位に止血術を要する損傷があれば,「胸が先か,腹が先か」「手術か,IVRか」というさらに難しい判断を迫られることになります。

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