イレウスの原因は様々であり,保存的治療で改善がない場合は適宜再評価を行い,むやみに保存的治療を長期化させることは避けるべきである
イレウスにも腹腔鏡手術の導入は進んでいるが,患者の病状や原因疾患によって適応を考える必要がある
手術後の癒着は避けることのできない生体反応であるが,イレウスのリスクを減らすために早期離床や癒着防止剤の使用などが行われている
イレウスは何らかの原因によって腸管内容の肛門側への輸送が障害された状態であるが,成因によって機械的と機能的に分類される。さらに機械的イレウスは血行障害の有無により閉塞性と絞扼性にわけられる1)。閉塞性イレウスの原因は大腸癌をはじめとする腫瘍性や術後の癒着性,経口摂取した食物残渣や異物の誤飲などがある。また,絞扼性イレウスは腹腔内に形成された索状物や軸捻転,腸重積,ヘルニア陥頓などが原因となる(「イレウスの診断」の項参照)。
原因が様々であるがゆえ,その病態によって治療法も異なってくるが,腸管の血流障害を伴う絞扼性イレウスにおいては緊急手術の適応となるのは言うまでもない。また,血流障害を伴わない閉塞性イレウスでは腹部手術に起因するような癒着によるものが多く,絶食による保存的治療が選択されることが一般的である。しかし,閉塞性イレウスでも大腸癌などの腫瘍が原因となっている場合は保存的に改善することは期待できないため,何らかの対処が必要である。また,高齢者の内ヘルニアなどは陥頓していても腹痛がほとんどみられないことも多く,「開腹歴があるから癒着性イレウス」という安易な診断は避け,手術加療の必要性を念頭に置いて,数日で改善がなければ再評価し,むやみに保存的加療を継続することは避けるべきである。
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