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遺伝性ヘモクロマトーシスの発端は?【生存に有利な要素があったためか】

No.4853 (2017年04月29日発行) P.61

中牧 剛 (昭和大学内科学講座血液内科学部門教授)

登録日: 2017-04-26

最終更新日: 2017-04-21

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  • 遺伝性ヘモクロマトーシスは,60~70世代前の1人のケルト人の男性に端を発したと聞きます。十二指腸における鉄吸収を亢進させ,わずかな肉食で子孫を残してきた遺伝子を有するこの男性について知ろうと,文献や書籍にあたっても見出しえません。家系図など,詳細がわかればご教示下さい。

    (福岡県 M)


    【回答】

    ヘモクロマトーシス(hereditary hemochromatosis:HH)に関する記載(1865)はフランスの内科医Armand Trousseauによる糖尿病,肝硬変を合併した28歳の男性患者の報告に始まるとされています1)

    遺伝性HHは,鉄過剰状態が生じる複数の遺伝性疾患を含む概念で,HFE(hemochromatosis,Fe)遺伝子変異が原因となる古典的HHは,欧米でのHH家系の60%以上を占める代表的病型であり,現在type1と分類されています。

    type1 HH(HFE C282Y変異)は興味深いことに民族間で遺伝子変異の保有率に大きな差が認められます。連鎖不均衡解析(linkage disequilibrium analysis)から,ご質問のように,原因となるHFE C282Y変異は北欧の民族集団(おそらくはケルト人)の中で6~8世紀頃に生じたとされています。異常な鉄蓄積という病的状態を生じる遺伝子変異にもかかわらず,何らかの理由で生存の優位性を持ち,その頻度を増大させ,単因子遺伝子疾患として特異な病像を形成したとされます2)

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