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(2)電気痙攣療法(ECT)【第2章 用語解説】[特集:向精神薬 総まとめ]

No.4709 (2014年07月26日発行) P.77

河野仁彦 (東京女子医科大学精神医学教室)

登録日: 2016-09-01

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▶概要

電気痙攣療法(electroconvulsive therapy:ECT)は,頭部に通電することにより全身性の痙攣を引き起こし,精神症状の改善を図る治療法である。薬物療法抵抗例や自殺の可能性が高い急性期症例,緊張病症状などではECT治療の優先度は高く,パルス波治療器を用いた修正型ECT(modified ECT:mECT)の一般化が求められている。

▶歴史

1938年に,CerlettiやBiniらが頭部通電により痙攣を生じさせることによって統合失調症患者を治療したことがECTの始まりである1)。1950年代になると,恐怖感の軽減や痙攣による骨折を防止するための静脈麻酔や筋弛緩薬の使用,呼吸循環管理を併用したmECTが開始された2)。その後,健忘などの副作用を軽減する目的でパルス波治療器が開発され,現在ではこれを用いたmECTが主流となっている3)

▶副作用

痙攣誘発後にせん妄,記憶障害などを生じることがある。記憶障害は主に逆行性健忘であり,治療終了後に生活史に関わる内容を長期にわたり想起不能となることは稀である。ECTによる死亡のほとんどの原因は,発作直後や回復期に生じる循環器系の問題と考えられており,術前後での十分な循環器系の評価は重要である。

▶適応と今後の展望

臨床的にECTの効果が示されているのは,大うつ病性障害,双極性障害などの気分障害と統合失調症である。大うつ病性障害に対するECTの効果は多くの研究で薬物療法と同等かそれ以上と考えられ4),薬物療法困難例や反応不良例,自殺念慮などの症状がある場合には,治療の選択肢として重要な位置づけとなる。ECTは薬物療法に反応を示さない場合に用いられることが一般的であるが,昏迷状態や緊張病症状が顕著で精神症状により生命的な問題が差し迫っている場合,薬物療法の危険性がきわめて高い場合,過去にECTが著効した場合,患者が望む場合などには,最初から選択される。効率よく治療効果をもたらし,副作用を軽減するためには,術前後における循環器系の評価を十分に行い,パルス波治療器を用いたmECTを行うことが望まれる。


●文献
1) Cerletti U:Am J Psychiatry. 1950;107(2):87-94.
2) Holmberg G, et al:Am J Psyciatry. 1952;108(11)842-6.
3) 本橋伸高:精神誌. 2004;106(5):537-45.
4) UK ECT Review Group:Lancet. 2003;361(9360):799-808.

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