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(9)外傷後ストレス障害(PTSD)【第2章 用語解説】[特集:向精神薬 総まとめ]

No.4709 (2014年07月26日発行) P.84

内出容子 (東京女子医科大学精神医学教室助教)

登録日: 2016-09-01

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▶定義,診断,経過,予後

外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder:PTSD)は強いストレス体験によってもたらされる精神疾患であり,自然災害,戦争,犯罪などと関連がある。わが国では,阪神淡路大震災以降に精神科領域で取り上げられるようになった。
発症の原因が,①PTSDを引き起こすのに十分なできごとであったか,②できごとを体験したことで,再体験,回避・麻痺**,過覚醒***の症状が1カ月以上持続しているか,の2点が重要である。

*想起したくない外傷的なできごとが,生々しい感覚を伴って勝手に頭に浮かぶ(侵入的想起)体験。発汗,動悸といった身体症状を伴うこともある。
**外傷的な体験やそれに関連することについて考えなくなり,体験を想起させるような状況を避けること。喜怒哀楽の感情がなくなるため,「落ち着いている」と誤解されやすい。
***睡眠障害,イライラ感,怒り,集中困難,過度の警戒心,驚愕反応など。交感神経機能との関係が示唆されている。

一般には,時間が経過するにつれて有病率が低下する(自然回復)が,寛解した後に再び強いストレス体験があると再発することがある。

▶治療

予防:外傷的体験の直後に最優先されるべきは,身の安全と安心の確保であり,不安を軽減し,良質な睡眠をとらせるなどの処置が必要になる。現況についての正確な情報提供も重要である。急性期のデブリーフィング(受傷直後に,類似の体験をした者が集まって体験を語り合う)の効果は否定されているので注意したい1)
薬物療法:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が第一選択薬であり,三環系抗うつ薬,MAO阻害薬も有効とされる。ベンゾジアゼピン(BZ)系薬剤は不安の軽減,睡眠改善に有用であるが,依存の問題や離脱後の症状悪化の報告があるため,単独では使用しない。
心理療法:認知行動療法が推奨されるが,中でも持続曝露療法(prolonged exposure therapy:PE療法)が有効2)である。日本トラウマティックストレス学会(http://www.jstss.org/)の情報も参照して頂きたい。


●文献
1) van Emmerik AA, et al:Lancet. 2002;360(9335):766-71.
2) Foa EB, et al:Treating the trauma of rape:cognitive-behavioral therapy for PTSD. Guilford Press, 2001.

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