東京都は4月、都内在住の乳児が、離乳食に混ぜて与えられていた蜂蜜の摂取を原因とする乳児ボツリヌス症で死亡したと発表した。これを受け日本小児科学会はこのほど、学会ホームページ上で、会員の医療従事者向けの提言を公表。1歳未満の乳児に蜂蜜を与えないよう保護者への指導を求めている。
乳児ボツリヌス症は、1歳未満の乳児に特有の疾患。ボツリヌス菌の芽胞が腸管内で発芽・増殖し、産生された毒素が吸収されることで発症する。乳児は腸管内の腸内細菌叢が不安定で、ボツリヌス菌の感染に対する抵抗力が低いため、さまざまな症状が引き起こされる。ただ、今回のような死亡例は稀だ。
診断時に乳児ボツリヌス症を疑って対応を
提言では、乳児ボツリヌス症の特徴として「便秘に引き続き、筋力が低下して脱力・哺乳力の低下・泣き声が小さくなる等の神経症状が出現する」ことを挙げ、鑑別疾患として疑わなければ診断に時間がかかると指摘。「便秘に引き続いて筋力低下を示唆する症状が出現した乳児では、乳児ボツリヌス症を疑って対応することが大事」と呼び掛けている。
予防法としては、ボツリヌス菌が国内の土壌から比較的容易に発見できる細菌であることから、「芽胞による汚染の可能性がある食品(蜂蜜など)を避けること」「井戸水を使用しないこと」を推奨している。また、乳児ボツリヌス症が感染症法の4類感染症に定められており、診断した医師は、直ちに最寄りの保健所に届け出る必要があることも付け加えている。
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