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切除可能な胃癌に対する術前補助化学療法【R0割合の向上などの利点と,手術時期逸失などの不利益の二面性が併存】

No.4857 (2017年05月27日発行) P.53

久森重夫 (京都大学消化管外科 )

坂井義治 (京都大学消化管外科教授)

登録日: 2017-05-23

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現在わが国では,切除可能な進行胃癌に対する標準的治療戦略として,D2リンパ節郭清を含む胃切除術およびS-1による術後補助化学療法が推奨されているが1),stage ⅢA,ⅢB胃癌の5年無再発生存期間はそれぞれ61.4%,37.6%と報告されており,未だ満足できる結果ではない2)。最近では,切除可能な進行胃癌に対しても,集学的治療の一環として術前補助化学療法(NAC)が注目されている。NACの利点として,予後因子となりうる微小転移に対して,早期から化学療法を行うことができ,化学療法によって局所の浸潤やリンパ節転移巣の縮小が得られた場合,結果として根治切除(R0)割合が向上することが挙げられる。しかし一方で,化学療法に感受性がなかった場合,結果的に病変の進行により手術時機を逸する危険性を孕んでいる。また,NACにより組織が脆弱となって,術後合併症が増える可能性や,その有害事象により手術自体が施行できなくなる可能性なども危惧されている。胃癌に対するNACは,わが国におけるエビデンス不足のため,いまだに標準治療として普及していないのが現状である。今後,術前化学療法のレジメンをどのように決定するかについては,現在進行中のJCOG0501試験(S-1/シスプラチン),JCOG1301試験(S-1/シスプラチン/トラスツズマブ),JCOG-PC1509試験(S-1/オキサリプラチン)などの結果を待つことになる。

【文献】

1) Japanese Gastric Cancer Association:Gastric Cancer. 2011;14(2):113-23.

2) Sasako M, et al:J Clin Oncol. 2011;29(33): 4387-93.

【解説】

久森重夫*1,坂井義治*2 *1京都大学消化管外科 *2同教授

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