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受動喫煙対策には法規制が必要だ[お茶の水だより]

No.4858 (2017年06月03日発行) P.17

登録日: 2017-06-01

最終更新日: 2017-06-01

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▶5月31日から禁煙週間が始まった。その一方で受動喫煙防止対策を盛り込んだ健康増進法改正案の今国会提出が厳しくなっている。塩崎恭久厚生労働相と自民党の茂木敏充政調会長が協議を重ねているが、折り合いがつかない状況だ。法案の行方は紫煙で霞み、見通しが立っていない。
▶揉めているのは飲食店の扱いだ。塩崎厚労相は原則禁煙を譲らず、踏ん張っている。しかし飲食店の中には原則禁煙は死活問題というケースもある。小社の近くにいわゆる街の中華料理店がある。味がよく値段も手頃な上に、喫煙可能のため喫煙者を中心にいつも混んでいる。店の主人は昨年肺癌から復帰し、マスク姿でフロアに立っているが、店の常連は事情を知っていても以前と変わらずたばこに火を点けている。喫煙者にはそれほど“食後の一服”は欠かせないものであり、一方主人は店の特徴を文字通り死守している。税収への影響とともにこの問題の根深さを実感した一幕だった。
▶東京都の小池百合子知事は都独自で条例を制定する方針を、7月の都議会議員選挙における都民ファーストの会の公約に盛り込んだ。自民党東京都連も追随し、東京都では公共施設や飲食店を原則禁煙とする方向で条例が制定されることになりそうだ。しかし実効性には疑問符が付く。
▶2010年に全国で初めての罰則付き受動喫煙防止条例を施行した神奈川県では、違反事例が毎年1000件程度に上りながら、罰則の適用は7年間でゼロだという。罰することが第一義の目的ではないが、一定の抑止力がなければ防止対策として機能していない。条例ではやはり限界がある。飲食店や喫煙者の納得性を高めるためにも、全国一律での法規制が求められるところだ。

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