国の第2期がん対策推進基本計画で「診断時からの緩和ケアの提供」が求められて5年が経った。社会の中で緩和ケアはどう位置づけられてきているのか。
6月23~24日、「集い対話する」をメインテーマに横浜市で開催された第22回日本緩和医療学会学術大会大会長を務めた有賀悦子氏に聞いた。
内閣府が2016年11月に実施した「がん対策に関する世論調査」の結果が、今年1月に公表されました。がん医療における緩和ケアについて「知っている」人は65.3%で、14年の同調査より2.1ポイント減少していました。
この差が誤差の範囲なのか、有意な後退なのか不明ですが、緩和ケアの普及啓発をしている者としてはショックな結果でした。
特に若い人の認知度が低いのは、学校教育や社会の中で、自分の生死、家族の介護について考えるようなきっかけが少ないためかもしれません。
若者たちが自分の人生や生死を考えるきっかけとして、今回の学術大会の市民参加セッションは、「拝啓 若者たちへ─AYA世代(15歳~30代)の“今を生きる”を考えよう」をテーマにしました。
また、社会との距離を縮める手段の1つとして、同学会として初めて患者アドボケイトラウンジ(PAL)を設置し、患者体験者が学会に参加しました。学術大会の参加者は8535人、PAL63人、市民参加セッション700人で、過去最高の参加数でした。
緩和ケアとは何かを教え込む必要はありませんが、生死を考えるきっかけを作り、どんなに努力をしたとしても、人はがんなどの病気になることがあり、仮に病気になったとしても健やかに過ごし人生を送ることができることを教えてほしいです。
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