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(3)結核の治療薬変更が必要な場合とその注意点 [特集:耐性菌を出さないための結核診療]

No.4758 (2015年07月04日発行) P.32

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-15

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  • 結核の治療は有効な薬の多剤併用を基本とする

    失敗しつつある治療に1剤を追加すると,その薬も耐性化し治療に失敗する

    治療に失敗しつつある時点での耐性化については,検査結果判明までタイムラグがある

    1. 結核治療の原則

    結核治療の原則をまとめると,「どの薬にも突然変異による自然耐性菌が一定数存在する。リファンピシン(RFP)では108個に1個という少数である。結核の多くは108以上の結核菌を体の中に含むか,あるいは治療中に分裂増殖することで,自然耐性の結核菌が出現する。治療により,感受性の結核菌は殺菌されるが,自然耐性の結核菌は増殖し,何カ月かの経過のうちに,体内の結核菌は耐性の結核菌に置き換えられてしまう。これが結核患者の薬剤耐性獲得である。複数の薬を同時に併用すれば,そのすべてに耐性の結核菌が存在しあるいは出現する危険性は低くなるため,治療に失敗しない」ということである。
    治療中に耐性菌が出現するかどうかに関わる因子は,活動性の結核菌を殺菌するには不十分な弱い治療が,どれだけ継続するかによる。よって,患者の側では菌の量,治療の側では治療薬,および,その治療薬を継続する期間によって,耐性化が起こるかどうかが決定される。結核治療のテキストには,通常菌量の喀痰塗抹陽性肺結核で治療失敗に至らないために必要な治療が記載されている。皮膚結核など菌の量が少ない場合は,より少ない薬でも治療失敗に至らないことが多いが,どの程度薬を減らしても大丈夫か,経験や報告が少なく明確ではない。本稿でも通常の菌量の塗抹陽性肺結核における治療失敗や,耐性化を予防するために必要な薬について記載する。なお,結核の治療にあたっては,厚生労働省の告示「結核医療の基準」に従うことが必要であるが,臨床医が結核医療を行う指針としては,日本結核病学会の「『結核医療の基準』の見直し─2014年」1)が有用である。

    2. 治療薬変更が必要な場合と対応

    1 有害事象

    (1)肝障害

    標準治療を行う場合,イソニアジド(INH),RFP,ピラジナミド(PZA)の3剤が肝障害を起こす危険がある2)。そのため,エタンブトール(EB),ストレプトマイシン(SM),レボフロキサシン(LVFX)のうち2剤以上を使用しながら,上記3剤を1剤ずつ増やしていく。EB,SM,LVFXの併用がないと,1剤のみでの治療期間が出現し,その薬への耐性化の危険が生じる。1剤での治療が1週間程度と短ければ,耐性化の危険はきわめて低いが,1カ月以上にわたるときは注意が必要である。
    肝障害の頻度としてはPZAが高いが,INHもしくはRFPによって起こることもある。INHもしくはRFPによる肝障害は,両剤の併用によって起こることがあるものの,いずれか1剤なら使用できる場合もある。よって,肝障害の回復後,INH,RFP,PZAを試みる場合,日本結核病学会の勧告の通り,肝実質の障害の疑いではRFP,アレルギー性の疑いの場合はINHから使用を試み,最終的には,INH, RFP, PZAの3剤のうち2剤は使用できるようにすることを目標とする。

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