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CASE29 見過ごされそうであった肺動脈血栓塞栓症の1例/労作時の息切れと胸部重苦感にて受診した85歳男性[CAUTION!臨床検査の落とし穴]

No.4692 (2014年03月29日発行) P.106

氏家勇一 (星総合病院循環器内科部長)

登録日: 2014-03-22

最終更新日: 2017-08-01

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  • 【症例紹介】

    85歳の男性。高血圧症および慢性腎臓病(CKDステージ3)にて内服加療中。他に特記すべき既往歴,家族歴はない。脂質異常症,糖尿病,喫煙歴なし。9月18日にゴルフをした時には特に何事もなかった。9月20日,登山をした時に今までに経験したことのない息切れを自覚したが,その後,日常生活には特に支障なく経過した。9月23日,駅の階段を上る時に息切れおよび胸部重苦感が出現し安静にて軽快した。9月27日に近医を受診したが,胸部X線写真,安静時心電図に異常所見を認めず経過観察となった。その後も階段を上る時など労作時の息切れと胸部重苦感が出現するため,精査目的に10月1日に当科外来を受診した。

    【身体所見】意識清明,呼吸音・心音に異常なし,下肢浮腫なし,体温35.7℃,血圧155/97mmHg,呼吸数15回/分,SpO2 95%(room air)。

    検査値のどこに悩んだか

    高齢者ではあるが,生来元気で活動性が高く,労作時の息切れと胸部重苦感の症状は,今回新たに出現した症状であった。胸部X線写真,心電図,心エコー図に明らかな異常所見を認めず,一般的血液検査データでも,もともとあるCKD以外には特に異常所見を認めなかった。しかし身体所見をよく見直すと,安静時の呼吸数が15/分とやや頻呼吸であること,呼吸機能検査は正常であるにもかかわらず,血液ガス分析でPCO2,PO2ともに低下していることより,肺でのガス交換障害が示唆される。

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