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若年者弁膜症における機械弁の適応【TAVIへの期待から減少傾向にあるが,現状では機械弁の選択が妥当であると考える】

No.4870 (2017年08月26日発行) P.58

大北 裕 (神戸大学病院心臓血管外科教授)

夜久 均 (京都府立医科大学外科学教室心臓血管・小児心臓血管外科学部門教授)

登録日: 2017-08-23

最終更新日: 2017-08-22

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  • 最近の弁膜症ガイドラインでは生体弁適応が拡大しつつあり,若年者に対しても,患者本人が納得すれば生体弁の使用を推奨する風潮です。しかし,論文を丁寧に読むと,大動脈弁に関しては60歳代以下の症例には機械弁の遠隔生存率のほうが優れているように思われます。京都府立医科大学・夜久 均先生のご見解をお願いします。

    【質問者】

    大北 裕 神戸大学病院心臓血管外科教授



    【回答】

    近年の全国集計で,大動脈弁置換術(aortic valve replacement:AVR)の手術数が増加の一途であり,この10年間で3倍になっています。これは主には生体弁AVR数の増加によるものであり,この10年間で約7倍になっています。一方,機械弁AVRはおおむね横ばいです。これは高齢者の大動脈弁狭窄症に対するAVRの増加が主たる原因と考えられますが,60歳未満の若年者においても生体弁AVRの数は増加しています1)

    機械弁と生体弁の長期遠隔期成績の比較試験の多くは観察研究でなされていますが,それらによると,60歳未満の患者では機械弁のほうが生体弁より生存率で勝っています2)3)。ガイドラインでも欧米日いずれも60歳未満は機械弁が推奨されています(推奨度ClassⅡa)。したがって,60歳未満の若年者に対する人工弁の選択は機械弁を第一選択とするべきでしょう。ただし例外は常に存在し,挙児希望の若年女性には機械弁の選択はなく,AVRをするとしたら生体弁,もしくは自己心膜による弁尖置換術(Ozaki法)となります。男性であっても,けがを伴いがちなコンタクト・スポーツを希望するため,あるいは通院,服薬の継続を回避するために生体弁を希望する患者もいます。

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