(兵庫県 K)
ペッツ(Petz)は人の名前で正式にはアラダー・フォン・ペッツ(Aladár von Petz)という名前のハンガリー・ブダペストの外科医です。消化管縫合器の名称にもなっており通称“Petz”とされています。ステイプラーは縫合器の名称になっており,同義語と考えてよいと思います。
消化管縫合器の歴史は,1909年にハンガリー・ブダペストの外科医ヒュマー・ハルテル(Humor Hultl)らがB字型ステイプル機構を用いた胃切離断端を閉鎖する縫合器を考案したのが始まりです(図1)1)2)。このステイプラーはレバーを降ろし吻合部の組織圧挫後,ハンドルの右回転で4列交互配列のB字型ワイヤーステイプルを打ち込み,胃切離断端を閉鎖する器械でしたが,その重量は3.5kgと重く,組み立てに2時間を要して実用には適しませんでした。
その後,1921年にPetzが胃腸縫合器を開発しました。この縫合器は重量1.8kg,B字型ステイプル2列交互配列で圧挫線上にU字型の細いドイツ製銀のステイプルが打ち込まれB字型に固定,その間を切離するものでした。B字型のステイプル,組織圧挫の調節,2列のステイプルラインという特徴は現在の縫合器の性能,原理そのもので,操作性に優れ実用的と評価されました。これは近代外科史の上に輝かしい実績を築いた縫合器の始まりであり,現在の縫合器の原型と言ってもよいと思います。
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