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食道癌に対する胸腔鏡下手術の定型化【標準治療へ向けた取り組み】

No.4870 (2017年08月26日発行) P.52

小熊潤也 (東海大学消化器外科准教授)

小澤壯治 (東海大学消化器外科教授)

登録日: 2017-08-23

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食道癌に対する胸腔鏡下手術は近年急速に広まっており,現在食道癌手術の約40%を占めるに至った。従来法である開胸手術に比べて胸壁破壊が少ないため,出血量の減少,術後疼痛の軽減が見込める1)。さらに内視鏡下手術の最大の特徴である拡大視効果を生かして,特に難易度の高い左反回神経周囲リンパ節郭清の操作を終始良好な視野のもとで行うことができるため,郭清効果の向上および反回神経麻痺の減少が期待できる。一方,手術の難易度が高いため,手術時間が長い傾向にある。本術式の普及が進みつつある今日において,手術の質を保ち,かつ手術時間を短縮するために,各施設で手術手技の定型化が試みられている。

食道癌手術の胸部操作には多くの行程が含まれるが,一連の手術手技を定型化し,術者,助手,内視鏡医が共通の認識を持っていれば,術野の展開がスムーズになり,手術時間の短縮につながる。また安全面において,①良好な視野で反回神経や胸管の走行を確実に同定すること,②気管膜様部や反回神経近傍でのエネルギーデバイスの使用に注意すること,は,重篤な合併症を回避するために特に重要である。

現在,標準治療である開胸手術と比較し,胸腔鏡下手術の非劣勢を示すことを目的としたJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)の第3相比較試験(JCOG1409試験)が進行中である。primary endpointは全生存割合であり,この結果で本術式の非劣勢が証明されれば,標準治療としてのエビデンスが確立することになる。

【文献】

1)Ozawa S, et al:Surg Endosc. 2013;27(1):40-7.

【解説】

小熊潤也*1,小澤壯治*2 *1東海大学消化器外科准教授 *2同教授

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